『教育格差』松岡亮二
何となく生まれた家庭によって教育の格差は存在していると思うのは誰でも感じているのではないか。
この本は、そのあたりの不確かな理解や思い込みも含めて認識を変えてくれる。
それは、データに基づき分析をされているので、否定できない実態が示されている。
親の学歴と子ども最終学歴相対的な格差。
そして近年格差が広がっているように感じている人も多いが、いつの時代も教育格差があり実態は変わっていないことは、課題を浮き彫りにしている。
しかしながら、世界各国と比較しても同じような状況であることも現実。
2000年代から都市部とそれ以外の地域格差もはっきり示されている。周りの環境も大きく影響していることが分かる。
教育における「生まれ」の影響を完全に除去した社会は一つとして存在しないのだ。換言すれば、実質的な身分のくびきから人々を解き放った社会は、少なくとも国際調査の対象国・地域については存在しないと。明言している。
現実を知ることによってさらなる格差が広がる可能性もある。対処できる親は行動を起こすかもしれない。
著者はそうした現実のなかで教育論議を可能にするための4カ条と具体的な提言を2つしている。
①価値・目標・機能の自覚化
②「同じ扱い」だけでは格差を縮小できない現実
③教育制度の選抜機能
④データを用いて現状と向き合う
提案1 分析可能なデータを収集する
提案2 教職課程で「教育格差」を必修に!
現状のままでいいということは、教育格差を肯定することになる。
では、改革案は?ということになるが、平等と自由というどちらを重視するかという価値観でも違ってくる。
著者は、一人ひとりの潜在可能性を最大化するための教育環境の整備が必要と訴える。
まったくその通りだと思うが、教育観はすべての人が同じではないので、議論も難しいと思う。
自分の人生を振り返るとみなそれぞれ、あの時こうしておけばよかったと思うことはあると思う。
それは環境なのか?受けた教育なのか?出会った先生なのか?それとも自分の責任?
一人ひとりの潜在可能性を最大化するための教育環境とは?
一生涯学び続ける人間を作りあげられることができる、ということだと個人的には思う。
格差解消にはむずびつかない結論で恐縮。