令和2年7月17日 県の新・総合計画「ビジョン」策定に係わる甘楽富岡地域懇談会が開催され、甘楽富岡の4首長・2県議とともに出席。
あらかじめ50ページにわたる資料をいただいていて、甘楽富岡振興局長にも事前に2回程説明を受けた。
それでもこの資料を読んでスッと入ってくる方は少ないと思う。そんな感想も語った。とにかくカタカナが多い。
事前にいただいた資料を見ていてどうしても引っかかる部分があった。それが幸福の再定義という言葉。
幸福は、人それぞれ人生において感じるもので行政が定義するものではないと思ったから。
宗教や信仰ともつながっているものであると思う。
資料にあるように幸福についての共感、共創的な場を否定はしない。でもどうしても引っかかった。
そんなことで、ヒルティ、アラン、ラッセルの幸福論をパラっと再読した。
それぞれ印象的な言葉を紹介したい。
ヒルティ
『人間の幸福の最大部分は、たえず続けられる仕事と、これに基づく祝福とから成っている。そしてこの祝福は最後に、仕事をば喜びに変えるものである。人の心は、その正しい仕事を見出した時ほど、愉快な気分になることはない。ひとは幸福になりたいと思うならば、何よりもまず正しい仕事をさがすがよい。失敗の生涯はたいてい、その人が全然仕事を持たないか、仕事が少なすぎるか、あるいは正しい仕事を持たないことに、その根本の原因がある。』
大部分は、キリスト教に基づく論理展開がされている。すなわち宗教や信仰にもかかわる問題でもある。
アラン
『幸福や不幸をつくる意見の色合いというものになると、他人のことでも自分のことでも、何ひとつ予想することも、何ひとつ想像することもできない。すべては思考の流れ次第だ。』
『幸福はあのショー・ウィンドーに飾られている品物のように、人がそれを選んで、お金を払って、持ち帰ることのできるようなものではない。そういう品物はよく見ると、ショー・ウィンドーのなかでも同じように青いものであったり赤いものであったりする。それに対し幸福は、人がそれを自分の手の中に入れなければ幸福ではないのだ。幸福を世界の中に、自分自身の外に求めるかぎり、何ひとつ幸福の姿をとっているものはないだろう。要するに、幸福については、論理的に推論したり予見したりすることができないのだ。今、幸福をもっていなければならない。君が将来幸福であるように思うとしたら、それはどういうことかをよく考えて見たまえ。それは、今、君はすでに幸福をもっているからだ。期待を抱くこと、それはつまり幸福であるということなのだ。』
ラッセル
『仲間とつきあい、他人と協力することが、普通の人間の幸福における不可欠の要素である。』
『幸福の秘訣は、こういうことだ。あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。そして、あなたの興味を惹く人や物に対する反応を敵意あるものではなく、できるかぎり友好的なものにせよ。』
『幸福な人たちの最も一般的で、他と区別される特徴と私には思われるものを扱うことにしよう。すなわち熱意である。 (中略) 熱意こそは、幸福と健康の秘訣である』
ほかにも赤線を引いたところがあるが長くなるのでやめときます。
行政が幸福を定義するのはやはり疑問。もしするなら不幸も定義して欲しい。そんなことしたらすごい意見が寄せられるし、現実的に不可能でしょう。
幸福度を上げたいということであれば、度の指標になるものを示すのがいいと思う。これもいろいろ意見があるだろうけど。
とにかく、「幸福」と「幸福度」の言葉、使い方は慎重にしてほしいと思う。そんな趣旨のことを意見として述べてきました。
ビジョンの中にSociety5.0(※)が出てくる。
※科学技術基本法に基づき、5年ごとに改定されている科学技術基本法の第5期(2016年度から2020年度の範囲)でキャッチフレーズとして登場した。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会(Society)を“Society 5.0(ソサエティー5.0)”として提唱している。
ちなみに、その前段は次の通り。
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)。
知事は、なぜカタカナ語を使うのかを説明をしてくれた。代用する言葉がないというのも事実だと思う。注釈や解説もつけたいといっていた。
まさに情報社会Society 4.0の資料だと思った。
ナシーム・ニコラス・タレブの『ブラックスワンの箴言』に次の言葉がある。
『情報の豊かな暗黒時代:2010年、英語だけで60万冊の本が出版されたが、記憶に残って引用されることなんてほとんどない。だいたい紀元0年ごろ、書かれた本はほんの一握りだった。今になって残っている本は少ないが、たくさん引用されている。』
20年後にこのビジョンを見た人がどのような感想をもつか?非常に気になるところ。